2020年度 第1回 定例研究会
<コロナ禍のいま日本のITを見つめなおす>
2020年09月10日開催
講演概要
コロナ禍で日本のITは諸外国に比べて遅れていることが、様々な事象で浮かび上がりました。本セッションでは、自身の国内企業・外資系企業の両方の勤務経験、またIPAが運営する情報処理安全確保支援士の集合講習講師経験などをもとに、現場感あるお話をさせていただき、日本と外国ではどういった違いが根底にあるのかを皆様といっしょに考える機会にしたいと思います。
講師
香山 哲司 氏
セミナーレポート
第1回定例研究会は、ジーブレイン株式会社 香山 哲司氏をお招きし、「コロナ禍のいま日本のITを見つめなおす」をテーマに、ご講演を頂きました。
前半は、香山様のご経歴を踏まえ、日本と海外のITに対する相違についてのご説明がありました。IT関連書籍の分類においても米国と日本で方法が異なっているケースがあることが示されました。事例としてAmazonの例を取り上げられ、米国ではセキュリティカテゴリーがあり体系立てられていて検索も容易になっているが、日本サイトは異なっていることなど、わかりやすく示唆に富んだ解説をいただきました。ビジネス面におけるITの果たす役割についても、日本では未だに文房具的な扱いとしてとらえている傾向にあり、海外ではビジネス戦略ツールととらえていることなど、文化、構造的にかなり相違があるのではないかとの問題提起がありました。
また、IT運用においては「People」、「Process」、「Products」;3つのPと言われる観点が重要ですが、様々な事象に照らして考えることができるとされました。たとえば、昨年の台風15号で長期に停電となった千葉県に、全国の電力会社から電源供給車で応援に駆け付けたものの、電気工事指揮権限者の有無でうまく機能しなかった事例を紹介されました。
このようにIT運用の観点以外にも3つのPが応用できるのではという仮説から、自分というひとりの人間を「システム」として見立ててどのように運用するとその能力(性能)を発揮することができるのか。個人のスキルアップや海外含めた人脈の開拓(People)・仕事の進め方(Process)・専門技術領域の多様化(Products)の観点が重要だったことをご自身の経験の具体例からご説明いただきました。
後半では、日本語のあいまいさをテーマにご講演いただきました。日本語は英語に比べて粒度が荒いと感じていることについて、「情報」という日本語を例に、英語では「Data」、「Information」、「Intelligence」を区別して使用していることや、「管理」という日本語をとおして、「Control」、「Management」、「Administration」の相違をパソコンの設定、管理を例示しながらわかりやすく解説いただきました。情報管理というとセキュリティの専門家は情報漏えい防止に目がいきがちであるが、言葉の意味について粒度を細かくすることで、漏えいの観点だけでなく利活用という視点で考えることができるのではないかとのご提案がありました。
「暗闇の象」のように目の前にある事象だけをとらえて判断するのではなく、全体像をとらえていくこと。そのためには単体の専門家の枠にとらわれずに、例えば3つ以上の得意分野を持ち自身の価値を高めてくことが重要であることを示され、講演を締めくくられました。
当日の参加人数は95名です。講演終了後のQ&Aにおいても、あいまいな日本語についてさまざまな意見が出るなど活発な討議が行われました。
講演資料
講演資料は下記からダウンロードできます。(JASA会員/CAIS・QISEIA資格者のみ。ログインが必要です)
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